「陰陽(いんよう)」という言葉と聞くと、どうしても胡散臭いイメージがあるかもしれません。(少なくとも筆者が学生の時はそう思っていました)でもこの考え方、東洋医学の根本的な理論のひとつなんです。
すべてのものは「陰」か「陽」
東洋医学では、世の中のあらゆるものを「陰(いん)」と「陽(よう)」という二つのカテゴリーに分けて捉える「陰陽学説」という考え方があります。
たとえば、
- 水は冷たくて下に流れるので「陰」
- 火は熱くて上に上がるから「陽」
- 夜は暗く静かなので「陰」
- 朝は明るく活動的なので「陽」
このように、相反する2つの性質が、お互いにバランスをとって世界や体の中を成り立たせているんです。余談ですが、こうして万物を2つの性質に分けられることを「陰陽可分」と呼びます。
陰と陽、それぞれの役割は?
陰陽の働きをもう少しかみ砕いて言うと…
- 陰は体を冷やしたり、潤したり、エネルギーを「抑える」働き
- 陽は体を温めたり、動かしたり、エネルギーを「生み出す」働き
車に例えるなら、陰はブレーキやラジエーター、陽はアクセルやエンジンのようなもの。
どちらが欠けても、スムーズに走ることはできませんよね。西洋医学的には自律神経の交感神経と副交感神経のような役割に似ているかもしれません。
つまり、陰と陽のどちらかが多すぎたり少なすぎたりすると、何かしら不調が出てしまいます。
- 陰が足りないと熱っぽくなったり、乾燥したり(陰虚)
- 陽が足りないと冷えや疲れが取れない(陽虚)
理想は「平(へい)」
では、どういう状態がベストなのでしょうか?
東洋医学では、陰と陽のバランスがちょうどいい状態を「平(へい)」と呼びます。
でも、気持ちや気候のように、人の体調も波があって当然。これは陰陽が常に変化しバランスを保ち続ける働きで「陰陽消長」と呼びます。だからこそ、「できるだけ“平”に近づけること」が健康のカギと考えられています。
たとえば、あまりにもテンションが上がりすぎると、その反動でぐったり落ち込んでしまう…そんな経験ありませんか?
まるでジェットコースターのように、上昇しただけ下降する。アトラクションとしては文字通り魅力的でも、自分の体調になぞらえたら、できるだけゆるやかな方が心地よく感じませんか?
陰キャも陽キャも陰陽学説
最近は「陰キャ」「陽キャ」なんて言葉もよく耳にしますね。これもまた立派な陰陽学説です。
- 陰キャ(陰気なキャラクター)=内向的、静か、人見知り
- 陽キャ(陽気なキャラクター)=外向的、元気、目立ちたがり
ただ、なんとなく「陽キャの方がいい」と思われがちですが、東洋医学的に言えば、どちらかに偏るよりも、「平キャ」でいるのが一番理想的。
気分の波も、体の状態も、常に安定している。
無理に明るくもしないし、閉じこもりすぎない。そんなニュートラルな在り方が、実は一番強くて、長く元気でいられる秘訣なのかもしれません。
「陰陽」の乱れとは?
「最近、なんとなく調子が悪い」「やけに疲れやすい」「冷えと熱っぽさが交互にくる」
そんなとき、もしかしたら陰陽のバランスが乱れているサインかもしれません。
鍼灸では、この陰陽のバランスを診て、整えていく治療が可能です。
興味が湧いた方は、ぜひ一度、神明鍼灸治療院にご相談ください。
筆者:佐久間 渓矢