たとえどんなに注意して運転していても、被害者にも加害者にもなり得る交通事故。 そして交通事故に付きものなのが、後遺症です。
事故直後、人間は本能的に「自らを守る」状態になります。いわゆる交感神経が優位となった興奮状態のため、事故による痛みや症状を感じにくいことが多いです。 しかし、この状態がいつまでも続くわけではありません。興奮状態から脱すると、急激に多様な症状が現れる場合があります。
単に腰や肩が痛む方だけでなく、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気など、自律神経の乱れによる症状が出る方も少なくありません。
では、そんな多様な症状に対して、なぜ鍼灸が特に有用なのでしょうか?
自律神経へのアプローチと治療の選択
交通事故後の後遺症では、患部が非常に敏感で、軽い動きや圧迫でも症状が増悪しやすい時期があります。 このような場合、動きを伴う刺激や、患部を直接揉んだり伸ばしたりするアプローチでは、かえって痛みや炎症を強めてしまうリスクが指摘されています。こうした方法は触った刺激によって一時的な鎮痛効果(ゲートコントロール効果)に留まりやすく、深部の問題や自律神経の乱れには対応できない側面があります。
一方、鍼灸刺激は、患部を一切動かすことなく、鍼による機械的刺激と灸による熱刺激という異なる種類の刺激を精密に与えられます。患者さんのその日の感受性に合わせて強度を細かく調整できる点も大きな利点です。
また、経絡や筋膜などで患部と関連する部位(手足などの末梢部)を刺激することで、患部に直接刺激しなくても治療することが可能です。これにより、敏感な患部に負担をかけずに自律神経の調整や痛みの軽減を図れます。特に手足などの末梢部への鍼灸刺激は、副交感神経を優位にし、過剰に高ぶった交感神経の活動を鎮静化する効果が複数の研究で確認されています。
局所・遠隔鍼圧刺激の比較研究(慢性頸部痛を有する女性患者に対する遠隔刺激の効果、2010)
特に手足などの末梢部への鍼灸刺激は、副交感神経を優位にし、過剰に高ぶった交感神経の活動を鎮静化する効果が複数の研究で確認されています。
鍼が偽鍼より有意に副交感神経トーンを高めるメタアナリシス(2023)
また、鍼は手では届きにくい深部の硬くなった筋肉や、滑走性が低下した筋膜(ファシア)にも直接アプローチ可能です。これにより、局所の血液循環改善や筋膜の滑走性回復が期待でき、根本的な症状の軽減につながります。
さらに、当院では医療機関でも使用される電気治療機や温熱治療器を併用することで、鍼灸の効果と相乗効果が期待できます。
交通事故後の後遺症に対する鍼灸の有効性は、多くの研究で支持されており、痛みの軽減や可動域改善に臨床的価値があると報告されています。
2024年 むち打ちに対する鍼灸の系統的レビュー・メタアナリシス(BMJ Open)
最後に
ここまで鍼灸の有用性について語ってきましたが、まず事故に遭遇したら病院やクリニックを受診をしましょう!病院やクリニック以外では「診断行為」は不可能ですので、まずは必ず医療機関を受診しましょう。
筆者:神明鍼灸治療院