最近とても寒いですね。
先日、私の住む地域では軽く積雪がありました。都心では雪が降ると通勤に大きな影響が出るため、私含め休日で助かった方も多いのではないでしょうか。話はそれますが、インフラを支える皆様には感謝です。
さて、このような寒い時期になると、足腰や首・肩の痛みが強くなると感じたことはありませんか?今回は、そんな「寒さ」と「痛み」の関係についてお話ししていきます。
疼痛閾値(とうつういきち)
まず、「疼痛閾値(とうつういきち)」という言葉から説明します。これは、体に備わった「痛みの感度」のことです。
この感度が鈍い状態では、よほど強い刺激が加わらないと痛みを感じません。一方で、寒さや血流低下などの影響があると、この感度が高まり、小さな刺激でも痛みとして感じやすくなります。
疼痛閾値が低い状態というのは、痛みを感じるハードルが低いので、ちょっとした刺激でもハードルを超えるので痛みを感じます。逆に、疼痛閾値が高い状態は、痛みを感じるハードルが高い状態なので、多少の刺激ではそのハードルを超えることができないのです。
人間の体は寒さを感じると、
- 末梢神経の興奮性が変化する
- 交感神経の働きが強くなる
といった反応を起こします。その結果、疼痛閾値が低くなりし、普段であれば気にならないような刺激でも、痛みとして認識されやすくなります。
つまり、冬場は身体が「痛みに敏感な状態」になりやすいということです。
実際に、寒冷環境下では痛覚過敏が起こりやすいことが、基礎研究や臨床研究の両面から報告されています。
血流低下と自律神経の影響
人間の身体は、寒さにさらされると体温を維持するための防御反応を起こします。
人間の体は寒さを感じると、
- 皮膚や手足の血管が収縮する
- 心臓や脳など、生命維持に重要な臓器への血流が優先される
といった反応を起こします。これは自律神経、特に交感神経が優位になることで生じる生理的反応です。
その結果、
- 筋肉や関節周囲の血流が低下
- 酸素や栄養の供給が減少
- 老廃物(発痛物質)が滞留しやすくなる
といった状態になり、痛みを感じやすい環境が作られます。
また、交感神経が慢性的に優位な状態が続くと、
- 本来、痛みを抑える役割を持つ内因性鎮痛系(下行性疼痛抑制系)が働きにくくなる
- 血管収縮やホルモン分泌の影響により、高血圧や高血糖のリスクが高まる
ことが知られています。
このように、交感神経優位の状態は、痛みを感じやすくするだけでなく、全身の代謝や循環にも悪影響を及ぼし、結果として身体全体の不調につながる可能性があります。
冬、睡眠時に痛みが出やすい理由
特に注意したいのが睡眠中〜起床時です。
睡眠中は、
- 深部体温が低下する
- 筋活動が減少し、ポンプ作用による循環が起こらない
ため、寒さに関係なく血流が低下しやすい状態になります。
その結果、
- 筋肉
- 腱
- 関節包
- 筋膜(ファシア)
といった軟部組織の滑走性が低下し、起床後や動き始めに「こわばり」や「痛み」を感じやすくなります。
いわゆる「朝の一歩目が痛い」という症状は、こうした生理的変化と深く関係しています。
東洋医学でいう「冷え」とは
東洋医学で重視される「冷え」も、単に体温が低い状態を指すのではなく、現代医学的に言い換えると、
- 血流低下
- 自律神経バランスの乱れ
- 組織の代謝・回復能力の低下
といった身体機能全体の低下状態を包括的に表現した概念と考えることができます。
その意味で、「冷え=機能低下」という捉え方は、西洋医学的にも大きく矛盾しません。
冬の痛み対策としてできること
寒い時期は、シャワーだけで済ませず、しっかり湯船に浸かることをおすすめします。
入浴による温熱刺激は、
- 血管拡張
- 筋緊張の緩和
- 副交感神経優位への切り替え
といった効果が期待できます。
また、
- 電気毛布
- 羽毛布団
- レッグウォーマー
などを活用し、睡眠中の冷え対策を行うことも重要です。
お灸などの温熱刺激を用いたセルフケアも、血流改善やリラックス効果の点から、冬場には非常に理にかなった方法と言えるでしょう。
筆者:神明鍼灸治療院