「鍼って、痛くないですか?」
初めての方からよく聞かれる質問です。
確かに、「鍼」と聞くと痛そうなイメージを抱きがちですが、実際に使われている鍼はとても細く、一般的には0.14ミリ前後、太いものでも0.25ミリ程度。髪の毛二本程度の太さしかありません。さらに注射針(約0.5ミリ以上)に比べると、ずっと細く、しなやかです。そのため、皮膚に刺すときの刺激はほとんどなく、「あれ?もう刺さってるの?」と驚かれる方も多くいらっしゃいます。
ただ、まったくの無刺激かというと、そうではありません。刺入時に「チクッ」と感じることもありますし、刺したあとに「ズーン」と重たく響くような感覚が出ることもあります。これはC線維を通じて伝わる感覚で、いわゆる「得気(とっき)」や「響(ひびき)」と呼ばれる、身体が鍼に反応しているサインです。心地よいと感じる方もいれば、少し不思議な感覚だと感じる方もいます。
さらに、鍼による軽い痛み刺激が、体の「疼痛抑制システム」を活性化するというデータもあります。人間の体には本来、「痛みを打ち消す」ための仕組み──下降性疼痛抑制系が備わっています。これは脳からの信号で痛みをコントロールする仕組みで、軽微な痛み刺激がトリガーとなって働き出します。
興味深いことに、過去の交通事故や慢性的なストレス、トラウマなどによって、この抑制系の働きが鈍くなってしまっていることがあります。そのような方にとって、鍼のチクッとしたリアルな痛みが、痛みの抑制スイッチを再び入れるきっかけになることがあります。
痛みというのは、単なる不快な感覚ではありません。適切に使えば、自分の治る力を目覚めさせる入り口にもなります。鍼灸はその手助けができる治療法です。
もし不安があれば、遠慮なく伝えてください。無理のない範囲で、あなたの感覚に寄り添いながら施術をいたします。興味が湧いた方は、ぜひ一度神明鍼灸治療院までお越しください。皆さまの健康をサポートするために、心地よい施術をご提供いたします。
筆者:佐久間 渓矢