「気ってなんですか?」
鍼灸の現場で、よくいただく質問です。
東洋医学では、「気・血・水(きけつすい)」という3つの要素が人の身体を作り、動かしている基本的な物質とされています。その中でも「気」は、最も基本でありながら、最も捉えどころがない存在かもしれません。
世間で「気」という言葉を聞くと、どうしてもスピリチュアルなイメージや、漫画やアニメに登場するような“見えないパワー”を思い浮かべがちです。たとえばドラゴンボールの「かめはめ波」のようなものですね。
でも、東洋医学における「気」は、もっと地に足のついた概念です。
それは、「体を動かすエネルギー」であり、「物質を構成する要素のひとつ」でもあります。見えはしないけれど、確かにそこに存在して、私たちの生命活動を支えてくれているものです。
少し難しいなと感じる方のために、ここでイギリスの外科医、ダニエル・キーオンが著した『閃めく経絡(The Spark in the Machine)』にある、気の興味深い解釈をご紹介しましょう。
彼は、「気」の旧字体である「氣」という漢字に注目します。この文字は、「气(きがまえ)」と「米(こめ)」の二つでできています。
- 「气」は空気や気体、酸素を意味し、
- 「米」は食べ物、つまりエネルギー源を指します。
この二つを合わせると、「気」とはつまり、空気(=酸素)と食べ物(=グルコース)からできているもの、と言えるのです。
私たちの体は、酸素とグルコースを取り込んで、エネルギー(ATP)をつくり出しますよね。この代謝の流れそのものが、まさに「気が生まれる」プロセスだと考えることもできるのです。
ですから、「気」という言葉をただ曖昧なものとして片づけず、「しっかり食べて、きちんと呼吸することで体にエネルギーが満ちていく」という具体的な姿として捉えると、「気が足りない」「気力が湧かない」といった言葉にも、納得感が出てきませんか?
反対に、「覇気がある」「気迫を感じる」という状態は、しっかりと食事を摂り、酸素を体にめぐらせ、エネルギーに満ちあふれている状態とも言えるのかもしれません。
鍼灸では、そんな「気」の流れや偏りを診ることで、体の状態や不調の原因を探っていきます。ぜひ一度、神明鍼灸治療院までお越しください。
筆者:佐久間 渓矢